平成20年10月18日 足高霊園(大聖寺別院)


茶礼

息道和尚顕彰 除幕式

秉心について
 この碑は大聖寺六世息道和尚が白隠禅師の懇願により父に授与した「秉心上座」の道号記である。
 息道和尚と白隠禅師の師弟関係を偲ばす一文でもある。
 恵鶴(白隠)を育てた息道和尚の顕彰碑として後世にこれを伝えておきたい。
 概略 父母の恩に報いる事無く出家し、十五歳より息道の下で修業励んでいた恵鶴禅士がいよいよ決心して行雲流水の旅に発つ前に父の安名を息道に請い、老師匠は修業に旅立つ愛弟子に与えた老婆心の戒訓でもある。
 文中に「人、秉彜あるは天性に本づく」との語あり、恵鶴は「父の道号を得て命を開けり」と歓喜している。末尾の古語は後の白隠禅師を予言していたように受け止められる。
   物あり天地に先んず 無形もと寂彜たり
   能く万象の主となり 四時を遂ふて凋まず

           平成18年 現大聖寺 住持 貞嘉





=秉心の注釈=   大聖寺 上村貞嘉
 息道自身が思うには現在の沼津市浮島地区原町に住む長沢家の現当主は沼津市の郊外西浦江梨の杉山家の出の人である。 若い頃この白隠禅師の父に当たる方は同じ江梨の出身で大聖寺より赴いた叔父に当たる松蔭寺の住職であつた 「大瑞宗育」 のもとにあづて、円覚寺派より、妙心寺派に転派したばかりで

荒れ放題であつた松蔭寺の再建を叔父の大瑞和尚もとに在った因縁で長沢家に婿入りし (三鍾愛あり)、そこで三人の子供が生まれた。その一人が出家して僧となり 「慧鶴」 (後の自隠禅師) となった。 
 私のもと大聖寺で仏飯を費やし(瓜葛之枝蔓)「あたかも瓜の葛の枝が勢いよく蔓を伸ばし生えるように盛んに成長して、私の下に侍して今に至った (元禄十五年)。
 ある時この慧鶴禅士が暫暇をして原の生家に帰り、帰山すると、私に拝接して願いでた。云く「私の年老いた父も耳順を過ぎ余生も喩えれば太陽の西に傾き掛け没する處に差し掛かっている。その父が生死事大(生死の大事、自分の死後) の為に、生前戒名の授与を望む思いがある事を息道老師に請い願わしいと思いうが今までありましたが願いを果たすことが出来ないでいました、このごろこの事を責めて私に云うのであります。」
 
 父が申しますには 「我が子(慧鶴)は、両親の愛を割き恩を棄てまでして出家し僧侶となりました、そのため長く親元で孝養に尽くすことをしなかつたのであります。」 「その為に父母の将来の塗炭(泥にまみれることもあるやもしれないこと救ってやりたいと思います)を救わんと欲せざるものならんや」 将来慧鶴が 「痩藤挑月(師を尋ねての当てのない旅)破笠包雲 (行雲流水行脚)一別して旅に出た跡は、果たして二度と会えることは難しいのではないでしょうか。」との訴えに  「そこで、私がお前(自隠禅師) の父の法名を一紙に需めるから、お前さんもそれを胸襟に挟む (大切に襟元に縫いつけておく)。
 


 そうすることは生きている間も更に死後も親への報恩なるであろうからそうしなさい」 
 これを聞いて慧鶴は只黙って低頭して、息道和尚の前を退席して、仰いで師に「安名の垂慈」を更に冀った。老師匠は慧鶴の深い心に感激され書き記した。
  

 名付けて「心宗彜上座」(へいしんそういじょうざ)と号す
 これは「人、秉彜あるは天性に本づく」の語より由来す

 *(秉彜奔ヘイイとは天より定められたる常道を執り守る
   こと)
 * (彜イ、を秉トる)*彜イは常なり
 *禅門では「秉ヒン」と読むがここでは息道の読みに従う
  慧鶴禅士はこの諱号を頂いて禅僧としての眼が
  開けたのでした。
  
  「この事(感激)を是非私の記憶に留めておきたい、
  師匠への思いを失うのは惜しい、何とかしたい」と申し
  たので私は早速毛筆を走らせこれを軸にして与えた。
  (現在 沼津 長沢家に伝わる)
  
  この道号記ははじめより父と子の談話の形式を取り記し
  ました。 
  更にそこに古語一過を拈じて、この道号記の意義を証し
  ます

     至嘱々々ショク
       
  物あり天地に先んず  (父母未生以前本来の面目)
  無形もと寂蓼たり    (本来無一物)
  能く万象の主となり   (主人公) 
  四時を逐ふて凋まず  (道心堅固 五百年不出の
                 禅僧となる)











大岡信文学碑 除幕式



大岡 信氏ご夫妻

           大岡 信 碑文

    朝の陽ざしは葉のうらで
    午後の緑をはや夢みている
    道の遠くで埃が上がる
    その中で舞う子供らのあいだをぬって
    むかし死んだおまえの母の優しい手が
    丸い小石をふりまいてゆく
    池のふちまで・・・・・

     「神話は今日の中にしかない」より
                      大岡  信







   大聖禅堂 開単式




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